寛容な社会をめざして

ナチュラルライフサポートダイアリー~社長の日記~

作業所の役割
2017.10.20ダイアリー

作業所の役割

 先日、伊勢原市の障害者雇用促進セミナーに参加してきました。

今回は、就労支援事業所職員として、関係機関や企業の担当者の方々に、取り組みを紹介するといったご依頼でした。

正直、戸惑いましたが、企業の方にこういう働く選択肢もあるんだと知ってもらいたいとのことでしたので、それならとお受けした次第です。

口下手の私には、持ち時間が30分ではやはり最後は時間が足りなくて、伝えたいことの半分も話せなかったという感じで、なんだかフラストレーションが溜まりました。

作業所の役割についてお伝えしようと、今回改めて考えたこともありましたので、せっかくだから文書にしておくことにしました。

台本風に。

 

皆さんこんにちは。レインツリーです。

私たちからは作業所(就労継続支援B型事業所)の役割って何?というテーマでお話しさせていただきます。

ここまでの皆さんのお話は、障がい者雇用やるぞ〜と前向きな内容でしたが、私たちの話は就労できない方々の話が中心ですので、ここまでの流れの腰を折ってしまうようなことになるかもしれませんが、ご容赦ください。

それではまず私たちレインツリーの紹介をさせていただきます。

 

<レインツリーの紹介〜コンセプトは、働いて元気になろう!>

 

というわけで現在たくさんの方に選んでいただいております。

さて、作業所の役割についてですが、私たちはこんな風に考えています。

 

1.安心していられる場所を提供する。

2.人や社会の役に立てる仕事を提供する。

3.生きる力を身に着ける機会を提供する。

 

別にこれができるのなら企業だっていいわけです。いや企業の方がいいでしょう。皆さん本当は就職したいのですから。

でもなかなか難しいのが現実です。

 

そもそもB型の利用者さんは、現時点では一般就職は難しいだろうという方々です。

と言って介護が必要なほど重度なわけではない。

一般就職を目指して移行支援事業所を利用したが就職できなかった。

あるいは移行支援事業所のトレーニングとかプログラムとかが苦手という方。

就職はしたのだけれどやめてしまった。

病院等で医療的ケアを受けてきて大分回復したのでステップアップしたいという方。

とまあ、こんな方々です。

こんな方々が、やることがない、行くところがないと言って引きこもっってしまったりしないように、まず、1.安心していられる場所が必要ですね。

 

障害があろうとなかろうと、私たちは皆誰でも安心していられる場所が必要です。

障がい者の方々にとってはその求める安心の度合いが健常者よりも大きいのです。

健常者だったら、仕事だからと耐えられることでも、障がい者はそうはいかない。

馬鹿にされたり、怒鳴られたりはもう嫌だと、レインツリーにもう何年もいるのにいまだに就労の話をするだけで涙ぐむ利用者さんもいます。よっぽど辛いことがあったんでしょうね。だからそういうことは絶対にない場所がいいわけです。

 

それから仲間がいる場所、自分と同じように生きずらさを抱えている友人がいるといいですね。それから支援者がいる場所、困ったりしたときに相談できるプロの支援者がいつもいてくれると心強いですよね。

 

次は2.人や社会の役に立てる仕事、です。

B型に来る方は働きたい方です。企業への就職は無理でも働きたい。遊びじゃ嫌なんです。

働きたくない方は、デイケアや地域活動支援センターといったところを選びます。好きな時間に行って好きなことをやれる場所です。仕事をするからにはそうはいかない。お金が必要だからという方もいます。でもやっぱり皆どこかで役に立ちたい、認められたいという欲求があります。それには企業に雇われることが一番なのか?障がい者にとって働く幸せって何だろう?と考えないわけにはいかないのです。

私たちはこう考えています。

「自分にできることを精一杯やって、誰かに喜ばれ、努力に見合った報酬が得られること」

企業ではこれじゃダメです。企業では、「会社が求めることをやって、経営者と株主とお客様と…に喜ばれ、結果、成果に応じた報酬が支払われる」のですから。

障がい者の方はいくら努力してもできないことがあります。いくら努力しても変えられないことがあります。でもそんな自分のままで精一杯できることをして、誰かが喜んでくれる。誰か…それはいつも一緒にいる支援者かもしれません、親御さんかもしれません、お世話になった学校の先生かもしれません、精一杯頑張っている姿を見て喜ぶ人がいるのです。

そうした努力に見合った報酬が得られる。これも嬉しいですね。励みになります。でもその努力に見合った額はどうやって決めるのでしょう。労働から得た結果や成果の対価としての報酬でしたら、月1万円は「けしからん」ですよね。

クロネコヤマトの故小倉昌夫さんがそう言ってから、作業所も色々勉強して試行錯誤を重ねて、大分改善されてきましたが、上がったのは数千円といったところです。

ここは事業所毎で考えの分かれるところですが、私たちは利用者にお支払いする工賃は労働の対価ではなくて、努力に対するご褒美、努力賞のようなものだと考えています。ですから予めお一人お一人の時給額が決まっているわけではありませんし、仕事の内容によって決まっているわけでもありません。出席日数によって時給が決まる仕組みを採用しています。出席日数が多いほど時給が上がる。休まず通ってくるというところを評価しているわけです。一日一回は家を出ましょう。短い時間でもいいから出ましょうと勧めているわけです。それがとても大事だと思うからです。生活リズムを整える。毎日目標を持つ、ということです。ですからある利用者さんにとっては作業所に来ることで、その日の目標をほぼ達成している方もいます。来てから何をするかは二の次なわけです。でもそれだって障がいのある方にとっては結構大変なことなんです。

でもそんなの嫌だ、もっとちゃんと稼ぎたいという方は就職を目指します。

その就職先はどんなところになるのか?

今一番多いのは、大企業が法定雇用率を満たすために作った特例子会社です。

その他一般企業の場合は、障がい者専用の求人になりますね。

一般企業が難しい方は、A型になります。就労継続支援A型。レインツリーはB型。

A型は、利用者と利用契約の他に雇用契約も結びます。福祉サービスの利用者でありながら従業員でもあるわけです。ちょっと複雑ですね。B型は雇用契約は結びません。ですからあくまで福祉サービスの利用者です。

ではA型で働ける人とB型を利用する人はどのくらい違うのか?

簡単です。雇用契約を結べるか結べないかです。

雇用契約を会社と結ぶということは、会社の求めることに応えられるであろう人ということになります。

週何日、一日何時間、この仕事をやってほしいという要求に応えられる方です。

B型の人は、応えられないかもしれないから雇用契約は結べないわけです。

この辺の当たり前のようなことが、意外に福祉関係者、特に就労支援に携わる方の中には分かっていない人が多いように感じます。

また、人を雇用するということがどれだけ大変なことか、、、

雇う側の人の立場になって考えることも必要だと思うのですが、まあそれはなかなかできなくて当然でしょう。

 

3.生きる力を身に着ける、です。

そんなB型の利用者でも、この世を何とか渡っていかなければなりません。

それにはつまり事故やトラブルに巻き込まれないようにするというのが一番です。

実に危なっかしい方が多い。それをやっちゃまずいだろうということをやっちゃう。そんなこと言ったらやばいよということを言っちゃう。

だからそういうことを日々一緒に働きながら時間を過ごし、そういう危なっかしいことがあるたびに注意したり一緒に対策を考えたりするわけです。

親は先にいなくなるのです。

それでもたくましくしたたかに生きていってほしいのです。

そのために何が必要か?

まず体力でしょう。何をするにも体力がなくちゃ。筋力はなくても持久力はあるとかそんなでもいいです。

それから仲間をたくさん作りましょう。友達を作れるといいですね。

信頼できる支援者を見つけましょう。それもできるだけたくさんいた方がいいです。この人がだめならあの人、という風に、ある意味逃げ場を作っておきましょう。どこかの巨大な一法人だけにすべてを任せるなどというのは考え物だと思います。逃げ場がなくなる。

レインツリーの利用者でも、デイケアにも行く、地域活動支援センターにも時々顔を出す、当然相談支援も使っている、そんな方もいます。

そんな関係機関の中で、その方と一番多くの時間を共に過ごすのがB型です。

毎日長い時間を一緒に過ごし、同じ釜の飯を食い、共に働いて汗を流します。

それだからその方のことを一番よくわかっているという自負が私たちにはあります。

長い時間を共に過ごすことが大事。そうして少しづつ少しづつお互いの距離が縮まっていき、信頼関係を築くことができるのです。そうした関係になった利用者さんには心から幸せになってほしいなと思います。できるだけのことをして差し上げたいなと思うのです。

 

以上が私たちの考える作業所の役割でした。

それって就労支援なの?とあらためて思った方もおられるでしょう。

でもレインツリーにきて就職ができたという方も実際におられるのです。

そういう方々は、体力がついた、自信がついたと言って卒業していきました。

私たちから見ると、その他に、集中力、注意力、そんなものも身に付いたように思えます。

悩み事に翻弄されている人がいます。

始終何かに悩んでいて何も手につかない。

最初はそんな風でも、レインツリーでは、その悩み事をいったん横において、目の前の与えられている仕事に集中しましょうと言います。

最初はそれが10分でも、そのうち30分になり、1時間になり、2時間になっていったら、その先に希望が見えてくるじゃないですか。

私たち凡人にとっては仕事をするのは飯を食うためです。いかに飯を食って生きていくか。

要は仕事ができればいいのです。悩みは消えません。ただそれに翻弄されずに、最初は短い時間でもいいから仕事ができるようになる。それを目指します。レインツリーに来たからと言って悩み事がなくなるわけじゃありません。障害は依然としてそこにあるままです。でもそれとなんとかうまく折り合いをつけて生きていくことを目指します。

それから就労支援というと、すぐに私たちは、できることを増やしましょう、できないことを少しでもできるようにしましょうと言って、スキルアップを目指したがります。が、私たちは利用者と一緒に庭仕事をするうちに、障がい者が健常者と一緒に何かを成し遂げるということの方が大事なんじゃないかと考えるようになりました。

レインツリーのガーデニング作業では、スタッフ1名利用者2名の3人一組で行います。庭木の剪定など高度な技術を要するようなことはスタッフがし、利用者はそうして剪定した枝葉を片付けたり、草むしりをしたりと、比較的容易な仕事を担当してもらいます。そうして庭をきれいにしてお客様に喜んでいただくという共通の目的に向かって、それぞれが自分の役割をこなすことで達成するのです。自分のやりたいことを自分のペースでするだけではうまくいきません。一緒に働いている人のことにも注意を払うようになります。

それでもどうしてもうまくやることができない場合があります。そういう時はちょっと特別な配慮が必要です。こういうことは得意、こういうことは苦手、こういう時にはこういう配慮があればできる。そうしたことを本人も支援者も少しづつ知り得ていきます。それが実績という財産になります。就活の時に相手企業さんに情報提供するのです。この方はこういう方で、こういうことが得意で苦手で、こういう配慮があればこれだけのことができます、と支援者が自信をもってお伝えするのです。そうするとそういう方ならば安心と企業さんも雇いやすくなるわけです。

 

それにしても、障がい者を雇用するのは簡単なことではありません。いや、雇い続けるのはと言った方が正確かもしれませんね。雇うだけなら、心優しい経営者の一声でできることです。しかし現場の人間の末端まで、その経営者の思いが浸透していなければ、どこか途中で行き詰ってしまうことになるでしょう。現場の人間の一人一人に寛容な心と余裕がないと難しいのです。いついつまでにこれだけの成果を上げなければ大変なことになるといった状況があったとして、そういう緊迫した状況下で障がい者の同僚にやさしく接してあげることができるでしょうか?失敗を許してあげることは?何を言っているかよくわからなくても聞いてあげることができますか?仕事が遅いけれど我慢して待ってあげられますか?

 

というわけで、本日いらした企業の方々に申し上げたいのは、無理をしないでほしいということです。雇用し続けられるかどうか早目に見極めていただきたい。難しそうなら私たちにご相談ください。色々アドバイスさせていただきます。それでもやっぱり難しい時は仕方ありません。私たちはそうした方々のセーフティネットの一つとしてありたいと願っています。

 

いかがでしたか?

そういう選択肢もあるんだと感じていただけたら幸いです。

 

ご清聴ありがとうございました。

 

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