寛容な社会をめざして

ナチュラルライフサポートダイアリー~社長の日記~

ガーデナーの季節
2018.03.08ダイアリー

ガーデナーの季節

ロウバイが黄色い花をつけ、ユキヤナギが新緑に染まり始めるなど、季節は本格的に春になろうとしています。

開花や新緑で春を感じる人は多いでしょうが、草が生えた伸びたで春を感じるという人は少ないですよね。

でもよく見てみると、そろそろ春の雑草たちが動き始めています。

オランダミミナグサ、ホトケノザなどはその名前や見た目からもすぐに見つかります。

スズメノカタビラは一見芝生のようですが、その芝生の中に生え始めると、あっという間に勢力を広げていってまだらに見えるので要注意です。

これからは一雨ごとに温かくなり、雑草が増え、ガーデナーが胸躍る季節到来です。

 

3月に入った途端、カリフォルニアのサクラメントでは一滴の雨も落ちてこなくなります。

冬の間は始終靄がかかったように濡れて湿った住宅街も、すっきり晴れ渡った空からの陽光が街路樹のプラタナスの新緑を輝かせます。

この時期はまだ刈るほど芝生も伸びていないので、お客様宅でやることといったら掃除くらい。

アメリカフウやマグノリアの黒い種がぼとぼとと落ちてきて庭を覆ってしまうので、クマデで集めて取り除きます。

ついこの間までは大量のプラタナスの落葉を涙と鼻水にむせながら片付けたばかり。

日本では公園や街路樹にしか見ないような大木が庭の真ん中に堂々とそびえたりしているので、それらの落とし物の掃除が一苦労なのです。

 

1985年から86年の間、私はアメリカへ渡ってガーデナーとして働いていました。

高校を辛うじて卒業した後、雇ってもらった造園会社にアルバイトに来ていた大学生の紹介で、現地でガーデナーをしている日本人にお世話になることになったのでした。

その頃の私はどこにも行くところがなく拾ってもらった会社ではありましたが、庭仕事はことのほか面白く、有り余るエネルギーに手を焼いている始末でしたから、海外青年協力隊に造園工として潜り込めないか、あるいはハサミやノコギリなど腰道具一つぶら下げて日本全国修行して回ろうかと大まじめに考えている最中でしたから、その話は渡りに船だったのです。

とはいえ、冷静な判断ができる大人ならば、ビザはどうするのだろう?向こうでの生活は成り立つのか?英語が喋れなくて大丈夫?などと熟慮したたうえで、「無理!」と判断するところでしょうが、そこは発達障害?ですから後先考えません。

現地で一旗揚げ、アメリカ人と結婚して永住する目論見はまんまと外れ、最後はその日本人のボスの期待に応えることもできずに帰国を余儀なくされたのですが、それから後の30年のすったもんだに比べてもすこぶる充実した毎日であったことは今思い返しても胸が熱くなるほどです。

 

3年間の造園会社での経験はほとんど役に立ちませんでした。

ぱちんと挟んでは引いて眺めという動いているより眺めている方が長いなどと揶揄される奥ゆかしい植木屋仕事なんてものじゃありません。

3人乗りのピックアップトラックには私の他にメキシコ人のマルティンとアントニオ、ケスースとフアン、モコとクリスティン、ネイティブアメリカ人のロンのうち、朝早く彼らの家の前でクラクションを鳴らして出てきたやつがその日のパートナーです。

それから115件ほどのお客様の庭の手入れに行くのですが、早いところでは120分ほど。お宅の前に駐車するや否や3人が飛び出していき、モアで前庭の芝を刈るもの、芝の縁をエッジャーを転がしそぎ落とすもの、ブロアーで落ち葉を吹き集めるもの、閑静な住宅街に突如現れやかましい騒音を発したかと思ったら口笛吹いて去っていく3人組といった感じ。

それをお客様は窓越しに眺め、満足げな笑みを浮かべています。

 

カリフォルニアの気候に合うケンタッキーブルーグラスの芝生はよく伸びるので1週間に1度は刈らないといけません。

アメリカの典型的な住宅街は道路が広く整然としていて、そこから家までは芝生の前庭になっています。

その芝生が隣よりも青いかどうかはとても重要です。

見事に青い芝生の家はよいガーデナーを雇っている証拠です。

日本人のガーデナーはメキシコ人やベトナム人、その頃時々現れ始めた会社勤めが苦手な白系アメリカ人よりも腕がよいと評判で、私のボスもお客様から大変可愛がられている様子でした。

当時私よりも一回りほど年上で、背は私よりも低いものの筋骨隆々の元レスラー、留学時に知り合ったブルースリー好きのアメリカ人の奥さんをゲットして持ち前のバイタリティで一国一城の主となったという男、クニ山形。

他の日本人ガーデナーも一筋縄ではいかないつわものばかりで、ロッキー青木の高級和食レストラン「ベニハナ」のロサンゼルス店長から独立して店を持ったが従業員に大金を持ち逃げされ無一文になってもそこからハワイ人の奥さんと二人で見よう見まねのガーデナーから身を再建したトーマス松枝さんなど。

二十歳そこそこの日本人のヤンキーなど、まるで珍しいものでも眺めるようにした後はぷいと興味がなくなったとでもいうように、特別扱いなど一切なし。

実力がすべてという世界がそこにはありました。

泣き言は犬にでも食わせてろ!

とっとと帰りたけりゃ帰れ!

悔し涙を流しながら芝を刈ったこともありましたっけ。

 

パートナーのメキシコ人らにしても、彼らは共に川を渡って来た幼馴染や兄弟らです。

皆で同じ家に暮らし、稼いだ金を国の家族に送金しつつアメリカライフをしっかり楽しんでいる様子。

朝に迎えに行った時もまだ酔っぱらっているのだけれど、そんな調子で一日ハッピーに芝刈りに励んではまた性懲りもなく街に繰り出して行く。

でもやることはやっているのでノープログレム。

でもある日、お客様の芝生が明らかに水不足で白くなっているので調べてみたらスプリンクラーの水の出口にハサミムシが詰まって死んでいるのを取り除いているときにボスのクニがやって来て、「マルティンがイミグレーションに捕まった」と言って珍しく取り乱して、それからしばらくはベテランの彼がいないので毎日40度を超える暑さの中でひーひー言いながら仕事をしたのだけれど、3ヶ月くらいしたらまた何食わぬ顔で戻ってきて、何事もなかったように黙々と仕事をするメキシコ人にしては寡黙なマルティンに恐れと脅威を感じ、リスペクトしましたね。

 

そのマルティンとピックアップトラックの車中で何かについて話し笑っているのを隣で聞いていたネイティブアメリカンのロンが「お前ら何喋ってるのかさっぱりわかんねえ」と言ったのは本当におかしかったし、なにやら自信になりました。

お互い英語はへたくそで事情は違うけれど何とか国を離れても働いて生きてるよな、というような、互いを認め合った瞬間でした。

 

生きるために汗して働く、そんなシンプルな生き方をしている人たちが報われる社会であってほしいなと思います。

 

雨降りのこの季節になると、そんなことを思い出しながら、これから始まる庭仕事に胸をわくわくさせています。

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