三回目のワクチン接種をした翌日から熱が出て、それが引いた後も吐き気と倦怠感がしばらく続きました。
何より気力が湧いてこないのには戸惑いました。
六十年近く生きてきて、初めてと言ってもいいほどの落ち込みでした。
うつ病でも発症したのだろうか?と焦りました。
でも原因はワクチンだけではないと思い至りました。
ここ数カ月の年度替わりにおける予算作成など、慣れない作業とそれに伴う説明と意思決定の数々。
不協和音や雑音。
これらに費やした膨大な時間とエネルギー。
やりたいことができないのが、どれほど自分を苦しめるのか改めて自覚した次第です。
では、私のやりたいこととは何でしょう?
社長の仕事とは何でしょう?
大企業と当社のような従業員二十名足らずの会社では全く違うでしょうけれど、私はこんな風に考えています。
一つ、会社の理念とビジョンを明確にし、社内に浸透させること。
一つ、全社員が一丸となれる施策を打ち出すこと。
一つ、全社員が気持ちを一つにし、頑張って働ける環境を整備すること。
一つ、会社の収益構造を正しく認識し、利益を出し、会社にお金を残すこと。
どれも大事ですが、私が最もやりたいのは上から二番目、つまり攻めること。
こっちの方が得意だし、面白い。
守るのはどちらかと言えば苦手です。
どちらもバランスよくできるのが一番いいのでしょうが。
今年度は、昨年の失敗を糧にして、しっかりと足場を守りつつ攻める、そんなところでしょうか。
まったく落ち込んでいる場合ではないのです。
もう一つ不調の原因は、昼頃になるともう目がかすんで見えなくなることです。
そろそろ目の病気が出てもおかしくない歳なので、眼科で見てもらったらドライアイだそうです。
パソコンを長い時間見ているのが原因ではないかと。
確かに瞬きするのも忘れて没頭しているときがありますね。
気が付くと何時間も椅子に座ってパソコンを睨み続けている。
首も肩も腰もがちがちです。
背中が丸まって項垂れたような姿勢を続けていると、神経回路や血流に影響が出るのだそうです。
現場に出ている頃はこんなことはなかったのにと一人ゴチたりしますが、仕方がない。
メガネをもう少しパソコン作業向けに調整してみることにしました。
そこへなかなか収束しないコロナウィルスです。
さらにウクライナでの戦争。
気が滅入ることばかりです。
共感疲れとも言うそうですが、そんなこともあるかもしれません。
昨日、見かねた妻が、私を緑化センターへ連れ出しました。
地元の造園芸業者が植木や野菜の苗を持ち寄って販売しています。
ホームセンターの園芸コーナーだけがあるような感じの場所で、屋外だし、いい天気でしたからたくさんの人が訪れていました。
ここへ来ると庭師の血が騒ぐと言いますか、いろんな植木を見て触って花の匂いを嗅いで回りたくなります。
一時間ほど見て回り、トマトの苗と、打ち捨てられたようになっていたシャガの苗を買って帰りました。
シャガは自宅の北側のあまり陽の当たらず雑草の生えるままにしておいた場所に植えました。
トマトの苗は、一つを小学生のいるお隣さんにお裾分けし、古い夏休みの朝顔用のプランターに妻が子供たちと一緒に植えている。
雑草を取ったり水をやったりひとしきり動いたらなんだか気分がいい。
足腰がコチコチで手が汚れているけれど、空は青く、達成感に満たされている。
去年植えたユリの球根から芽がもうだいぶ長く伸びている。
バラとオオデマリ、カシワバアジサイとスモークツリーもたくさん花芽を付けている。
キンメツゲはその名の通り金色の新芽を輝かせている。
後先あまり考えずに好きなものを好きなように植えた小さな庭ですが、植物たちのなんと愛おしいこと。
これまではどうしても庭に降りると仕事モードになってしまい、楽しむというよりはやっつけるという感覚で、それはそれで面白いしやりがいもありました。
でもこれからはもう少し庭仕事を楽しんでみようかなと思いました。
庭の持つ力を信じて、庭仕事で人を元気にする。
それを極めて多くの方々に伝えていく。
それが一番やりたいこと、原点だったと改めて思いました。
そんな気持ちになれたのも、今回の落ち込みがきっかけだったことを思えば、やはり人生に無駄なことは一つもないのだなと気付かされます。